保守主義の哲学---マスメディアによる「普天間基地移設問題」の視野狭窄的報道の狂愚(3) [政治]
―――――エドマンド・バーク保守主義(哲学)―――――
日本国のマスメディアによる「普天間基地移設問題」の視野狭窄的報道の狂愚(3)
「マッキンダー/スパイクマン地政学」の戦略的知見による「普天間基地移設問題」の論考
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● 欧州(新NATO)におけるリムランドによるハートランド包囲の完成例(2004年)
(1) 欧州リムランドと米海軍力の結合によるロシア(=ハートランド)包囲の完成。
(2) NATOによる、バルト海・黒海・地中海の内海化(制海)→ロシア大西洋艦隊の封じ込めに成功。
――中川八洋 筑波大学名誉教授「核抑止の地政学」の要点整理(ここから)――
① 核兵器の、(長距離戦略爆撃を別とすれば)その主力はICBM(InterContinental Ballistic Missile:大陸間弾道ミサイル)で、かつてはSLBM(Submarine Launched Ballistic Missile:潜水艦発射弾道ミサイル)がその次にあった。
ICBMやSLBMは、宇宙空間を飛翔するため、通常兵器しか知らないマッキンダー地政学やスパイクマン地政学など、古すぎて役に立たないと誤解されているが、決してそうではなく、マッキンダー地政学もスパイクマン地政学も、核兵器の時代にあって、有効な学問である。
すなわち、“核兵器の地政学”は、マッキンダーやスパイクマンの地政学をまったく変更せず、何らの修正すらせず、その核兵器への応用ということになる。
② “核兵器の地政学”とは、以下の三つの理論を「地球的な地理」において構築する学問を指す。
つまり、核兵器の地政学とは、「核抑止の地政学(=中川八洋の造語)」と言える。
(イ) ロシア(=「ハートランド」)からの核兵器が、日本など「リムランド」(=ハートランドの周縁地)に投下・攻撃されないよう抑止する。
(ロ) ロシアの核兵器を米国本土に投下・攻撃させないよう抑止する。
(ハ) 米国がユーラシア大陸のリムランドへ接近し駐兵するのを拒否するために、ロシアの核兵器を使用させないよう抑止する。
③ この“三つの抑止”に対して、ハートランドが指をくわえて傍観してくれるわけではなく、この抑止を粉砕的に拒否しようとする。“逆抑止”である。 すなわち、ハートランドを“包囲”する側としては、ロシアのこの“逆抑止”をさらに封殺しなければならない。
④ 正義(侵略を防止する)側が不正義(侵略をする)側に対して行なう“善の抑止”を“抑止”と言い、逆に、正義側の自衛や逮捕・懲罰行動に対して不正義側がそれをさせないための抑止、つまり「悪の抑止」を“善の抑止”と混同しないよう「逆抑止」と定義する。
⑤ 核兵器についての誤解と無知
核兵器の誕生によって、米本土やその周辺の海域から、それをロシア中枢部(=ハートランド)に投下できるようになったので、ユーラシア大陸の周縁地帯(=リムランド。例えば欧州大陸、英国、トルコ、日本など)に米国の核基地を置く必要はなくなったかに思い違いをする日本人は意外と多い。
この幼稚で短絡的な誤解は、核兵器がICBMやSLBMのように数千km(=約5,500km)以上から1万kmの長距離ミサイルばかりで十分だと思い込む、素人の無知に起因する。
核兵器には中距離ミサイル(=射程約3,000km~5,500km)があり、陸上配備のであれ、海上・海中配備のであれ、これらはリムランドやその周辺海域からでないとハートランドには届かない。
しかしながら、これらの中距離ミサイルは、「地球規模の地理の非対称性」と組み合わせると、実は「最も強力な核抑止力」となるのである。
それゆえに、ロシア(=ハートランド)は、リムランドとその周辺海域からの米国の中距離核兵器を、米国本土からの核兵器より百倍も千倍も恐怖する。
このことは、中共(=第2ハートランドあるいは拡大ハートランドと言える)においても全く同様である。
恐怖の度合いが抑止の信頼性の高さだから、リムランドやその周辺への中距離核ミサイルの設置・配備こそ、対ハートランド牽制の奇策的な決定打なのである。
⑥ 「地理の非対称性」--- 敵の中枢攻撃と米国の聖域化
レーガン大統領が、十五年間もKGB議長であった、アンドロポフ共産党書記長が総指揮を執る世界中に巻き起こる轟々たる反核運動に抗して、強靭な意志で配備を予定通り強行したのが、パーシングⅡ(=中距離弾道ミサイル)と地上発射型トマホーク(=巡航ミサイル・GLCM)であった。
その第一陣は、1983年11月、それぞれ、西ドイツのノイウルム(ミュンヘン近郊)と英国のグリーナムコンに設置された。
この二種のミサイルは、最終配備年の1988年に向けて、着々と欧州五ヶ国に配備されていた。イタリア/英国/オランダ/ベルギー/西ドイツである。
ソ連の恐怖はピークに達し、ついにソ連は、1970年代の後半から西欧諸国を恐怖に陥れていたのと主客入れ替わって、今度はソ連自身が恐怖の余り、西欧と日本が撤去を要求していた自分のSS20(=中距離弾道ミサイル)とバックファイア爆撃機を解体するから、何とかパーシングⅡとGLCMを撤去してくれ!と米国に泣きついた。
これに対し、1987年12月、何とレーガン大統領は米ソINF廃絶条約(=中距離核戦力全廃条約)にすぐさま調印してしまった。
計画どおりのパーシングⅡ/GLCMの全基が配備完了(1988年)する直前であったため、欧州諸国はレーガンのこの対応に驚愕した。
その理由はともかく、「なぜパーシングⅡとGLCMトマホークはそれほどの恐怖をロシア(=共産ソ連)に与えたのか」が重要である。
核戦力の真の優位/劣位は数的バランスを越えて定まる。
地理と核兵器の組み合わせを上手くやれば、仮に核戦力が数的劣勢であっても、絶対優位を獲得できる。
このような地理と核戦力を組み合わせる戦略理論を「核兵器の地政学」と言う。
(1) 地理が対称である場合
核戦力の数的バランスが、核戦争の勝敗の大部分を決定する。
(2) 地理が非対称の場合
米国とロシア(=共産ソ連)の間では、地理の非対称性が存在する。
兵器の配備位置によっては、ハートランド(=ロシア)を決定的に有利にしたり、ハートランド(=ロシア)を決定的に不利にしたりする。
SS20とバックファイア爆撃機の配備で西欧諸国を恐怖に陥れて、ロシア(=共産ソ連)が欧州での戦域核戦争の主導権を掌握している態勢が、米国のパーシングⅡとGLCMが配備された瞬間、米国が主導権を握る欧州「戦域」核戦争の体制へと180度逆転してしまったが、これは、この「地利の非対称性」を、米国が活用したからである。
この大逆転は、ロシアはその西部域全体が欧州戦域の核戦場になるのに対し、米国はこの戦域核戦争の戦場からは全く安全な「聖域の位置」にあるという地理の非対称性によって生じたのである。
この「地理の非対称性」は、ロシアがSS20やバックファイア爆撃機を何倍にも増やして、核戦力のバランスを対米の10倍にしても、それを凌駕して、「ロシアの敗北、米国の勝利」を確定させる。
図A 1983年からのパーシングⅡ(=中距離弾道ミサイル)と地上発射型トマホーク(=巡航ミサイル・GLCM)の配備図
図B 欧州「戦域」核戦争の概念図
(イ) ロシア(=共産ソ連)が米国本土との全面核攻撃をせず、欧州戦域に限定した核戦争を行なった場合
欧州戦域核戦争・前後の米国とロシア(=共産ソ連)の国力は、不可避的にロシアが激減する。
そして、欧州戦域核戦争後、欧州の核攻撃によって壊滅的打撃を被ったロシアに対し、無傷の米国が核戦争を開始すればロシア(=共産ソ連)は確実に滅亡する。
ゆえに、ロシアはこのような不利な戦争は決してしないし、できない。
(ロ) ロシア(=共産ソ連)が上記(イ)の不利な状況を回避する場合
ロシアがこの不利な状況を打開する唯一の道は、対欧州/対米・全面核戦争しかない。
これを「(欧州)戦域核戦争の全面核戦争へのエスカレーション」と言う。
しかし、ロシア(=共産ソ連)は、勝てる見込みのない不利な戦争を決して選択しない。
全面戦争をするくらいなら、必ず白旗を揚げて退却する。
不利となれば即座の「退却兵法」こそは、戦争におけるロシア民族五百年の伝統で、十五世紀からのロシア民族の戦争哲学である。
――中川八洋 筑波大学名誉教授「核抑止の地政学」の要点整理(ここまで)――
「核抑止の地政学」(イ)・(ロ)から日本国が学ぶことは極めて重要な意味を持つ。
第一に、ロシア(=ハートランド)であれ、中共(=第2ハートランド)であれ、そのリムランド(=周縁地帯)である日本国、台湾、韓国、フィリピン、タイ、マレーシア、シンガポールそしてインド(→特に中共の背面にあるインドが所有する核兵器が中共に対して与える「核抑止」としての意義は、極めて大である)等が中距離核ミサイルを配備して(リムランド―米国)安全保障体制(=太平洋縦深/対ハートランド縦深)を構築するならば、欧州の場合と同様な「地理の非対称性」が形成される。
ただし、リムランドに配備される核ミサイルは、例えば日本国の場合、その「発射スイッチ(キー)」は日本国と米国の二者で共有し、どちらか一方の国家が単独で発射できないようにしておくことが必要である。
これは、核兵器が、同盟国の裏切り行為のような「目的外使用」されることを防ぐためである。
この時、上記と同様の理由により、ロシアも中共もリムランドに先制核攻撃をしかけることは、「万が一にもできなくなる」ということである。
第二に、仮に日本国が単独で核武装したとしても、日米同盟を破棄するならば、「地理の非対称性」は消滅し、ロシアと日本国又は中共と日本国は「地理が対称」となる。
この時、上記で説明した通り、「核戦力の数的バランスが、核戦争の勝敗の大部分を決定する」から、日米同盟破棄の時点で、即座に日本国の敗北が確定する。
であるから、日本国の核武装論者で、日米同盟の破棄と日本の単独防衛論を唱えるものは、軍事戦略に無知であり、その無知は「日本国の敗北を確定せしめる論理」であるから、そのような暴論を唱える者は、“日本国の悠久の繁栄”・“子孫への責任と義務”を重視する真正の保守主義者では決してない。
逆に「日本国の敗北の確定」・「日本国の廃墟」を目論んでいるのであるから、隠れマルクス・レーニン主義者(社会主義者・共産主義者)かポストモダン系のアナーキストである。
この点において、読者の皆さんは、日本国の「単独防衛論」、「単独核武装論」、「日米同盟の破棄」、「在日米軍の排除」などを唱える輩については、「似非・保守主義者」であると考えるのが妥当である。
以上のように、マッキンダー/スパイクマン地政学の「核兵器への応用」が「東アジアから南アジアにかけてのリムランドによる中距離核ミサイル・ハートランド包囲網」であり、アルフレッド・セイヤー・マハンの「シー・パワー論」である「太平洋縦深(=対ハートランド縦深)の核兵器への応用」が「大陸間弾道ミサイル(ICBM)あるいは太平洋上からのSLBMの配備」にすぎないということである。
このため、リムランドへの米軍駐兵と海軍基地の設置が、ますます米国の対外政策「グローバルな安定と秩序」の最優先事項となっているのである。
なお、アルフレッド・セイヤー・マハンの論理は下図の中に簡単に記述した。
↑この図は、文字が読み取れないので、後日改めて見やすいものをブログアップします。
保守主義の哲学---マスメディアによる「普天間基地移設問題」の視野狭窄的報道の狂愚(4)へ続く













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